人並み以上に陽に灼け、コルムの「アドミラル」を嵌めた男の索性はわかりやすい。
おそらくそれらはヨットのスキッパー (=艇長)であることの身元証明なのだ。
意外と知られていないことだが、ひとつのヨットクラブに所属している正メンバーは
どこの国でもあらゆるヨットクラブにゲストとして迎えられる。

アメリカでもヨーロッパでも、浮き桟橋につながるセキュリティゲートが開く。
どのクラブハウスのバーにも居場所があるヨット乗りたちは、無自覚のコスモポリタンなのである。
「アドミラル」はそんな認められた男であることを、さりげなく物語る。

ほんらいヨットレースの最中に腕時計で時間を計るのはクルー(=乗組員)の役目だ。
いっぽうスキッパーにとっての腕時計は意味が異なり、ただ時間計測の道具ではない。
それなりのレースであれば、レース後のパーティーではジャケットが必須となり、
礼儀に適い、ドレッシィで、しかも誇らしいセレモニーに似合う腕時計が望まれる。

そうしたスキッパーのドレスウォッチに求められる難度を、コルムの「アドミラル」は超えた。

文字盤のカラフルなグラフィックは単にデザインではなく、正しく1から12を示す国際信号旗である。
船舶免許の試験範囲でもあるヨット乗りの必須知識を、コルムは極上のアイコンに変えたのだ。

1980年代にヨットマンは、「アドミラル」を自分たちのためのドレスウォッチと認めた。
それ以来、いつかはそうなりたいとクルーたちが願う、スキッパーの装いであり続けているのである。

「アドミラル」の名前は伝説的なヨットレース、アドミラルズカップに由来している。
各国チーム3艇すつの合計得点で争う外洋レース、という時点で既にスケールが度外れていた
ヨットレースは、2003年を最後に、それいらい再開されていない。
それでもヨットマンたちは、自分たちに課すルールの難度を下げることなど考えもしないのだ。

そしてもう二度とないだろうレースの名を戴く腕時計は、彼らにいまも支持される。
コルムの「アドミラル」は、誇り高き種族のレギュレーションに適う腕時計なのである。

Profile

並木浩一
桐蔭横浜大学教授(博士)、時計ジャーナリスト。ダイヤモンド社の編集者を経て、メディア文化の研究に進み現職。
主な著書に『腕時計一生もの』(光文社新書)、『腕時計のこだわり』(SB新書)などがある。
「アメリカズカップ」TBS特番(1994年)でスーパーバイザーを務めて以来、時計界屈指のヨット通。

Photography by Takeshi Hoshi (estrellas) Editorial by Mikako Kanenobu

Recommend Models

ヨットのナットをイメージした12角形のケースや船間で交信する際に用いられる国際信号旗をインデックスに採用した、コルムのフラッグシップコレクション「アドミラル」。
黒の文字盤を華やかに彩る18金ローズゴールドのベゼルが印象的な『アドミラル レジェント42 クロノグラフ』(上)とマザーオブパールをダイヤルに配したレディスモデル『アドミラル レジェント32』(下)は、遊び心溢れる大人たちのハズしのドレスウォッチとして定評がある。

ADMIRAL
Legend 42 chronograph
A984/02984
ADMIRAL
Legend 32
A020/03661