憧れは、変わらない。
コルムにまつわる父と息子の短編物語

父のコルム

母親の死後、
些細な誤解から確執が生まれてしまった
父親と息子の物語。

今日、その父親が亡くなった。

海が見える丘の上に建つ実家で、
父親の書斎を整理していた息子の妻が、
古い机の引き出しから、
父親の日記と、
すっかり忘れていたが、
父が大切にしていた古いコルムを見つけた。

父の秘密を覗き見る罪悪感を感じつつ、
妻と二人で父の日記を読み進めると、
父の後悔の想いと、
出来れば、もう一度、
息子と酒を飲みながら、
遠い昔のように他愛もない会話を
したがっていたことを知る。

その夜、実家のテラスから、
眼下の海を見つめている息子。
父が好きだった
ビンテージのスコッチが注がれ、
二つ並んだグラスの向こう側には、
父の古いコルムが、
そして、こちら側に座る息子の腕には、
新しいコルムがそれぞれ光っていた。

無意識に買ったつもりだったが、
子供の頃、父に向かって
「その旗の腕時計かっこいいね。」と、
ねだっていたことを
今更ながら、思い出していた。

父のコルム

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